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第671号 2015(H27) .05発行

Click here for PDF version 第671号 2015(H27) .05発行

農業と科学 平成27年5月

本号の内容

 

 

タマネギのセル成型苗における
緩効性肥料の培土混和技術

Toyama Prefectural Technology Center for Agriculture, Forestry and Fisheries
園芸研究所 野菜課
主任研究員 浅井 雅美

Introduction

 富山県に近年導入されたタマネギの定植機は,448穴セルトレイに対応している。県内の農地は96%が水田であり,かん水設備が整った水稲育苗ハウスが広く普及していることから,タマネギの育苗においても水稲育百ハウスを利用して行われている。
 定植機導入当初は,ハウス内を耕起・施肥して苗床を作り,セルトレイを苗床に密着させ根を伸長させて栽培する直置き育苗が行われていた。しかし定植時のタマネギの植付姿勢が悪いこと,夏場のハウス内での作業が重労働であること,ハウス内を耕起することで翌年の水稲育苗の際に地面を均平に直す必要があることなどの問題から,根鉢の形成が促され,水稲育苗でも使用していてなじみのある遮根シートを地面に敷設した上にセルトレイを並べる方法で育苗が行われている。
 しかし,448穴セルトレイの容量が小さいことに加え,遮根シート上での育苗であること,8月下旬から始まる育苗ではハウス内が非常に高温であることから1日2回のかん水が必須となっている。また育苗培土も少量のため,培土に含まれる窒素量のみでは不足し生育が劣ることから,育苗時の追肥は施肥量も施肥回数も多い体系となっている。
 そこで,育苗培土に緩効性肥料を混和することで追肥を省略することが可能であるかを苗質と本圃での生育,収量について検討した。

2. Testing Method

 タマネギ品種’ターザン’を供試し,448穴セルトレイを用いて2011年9月1日および9月8日に播種した。育苗培土はソリッド培土を使用し,播種2,3週間目に液肥(サンピ833)散布,4~7週間目まで1週間おきにポーラス肥料を施肥(窒素成分でセルトレイ1枚当たり合計4.2g 施用)した区を対照とし,培土にマイクロロングトータル(70タイプ)をセルトレイ1枚当たり25g混和(窒素成分で3.0g)した区(以下25g区),および50g混和(窒素成分で6.0g)した区(以下50g区)を試験区とした。試験区においては,本圃定植3週間後の追肥(窒素成分で3kg/10a)の有無についても検討を行った。定植は9月1日播種の苗を10月21日,9月8日播種の苗を10月28日に畝幅160cm,条問24cm,株間10cmの4条植えで行った。定植前に基肥N:P2O5:K2O=12:33:12(kg/10a)施用し,融雪後3回に分けてN:P2O5:K2O=14.2:2.8:13.2(kg/10a)を追肥した。試験規模は1区2.5㎡の2反復で,生育調査は1区12本の2反復,収量及び品質調査は1区1.6㎡の2反復とした。収穫は倒伏株が区全体の80%になった1週間後に行った。

Results and Discussion

1)苗質は9月1日,9月8日の両播種目において,施肥方法,施肥量による葉鞘径,生葉数,根数,乾物率に差はなかった。苗の乾物当たり窒素含量は対照区で最も多く,25g区で最も少なくなった(表1)。

2)年内の生育は,播種目が早い程大きくなっていた。また定植3週間後の年内追肥区で大きく,追肥なし区で小さかったが,乾物率は年内追肥区で低く,追肥なし区で高くなっていた。乾物当たり窒素含量は播種目の差はなく,年内追肥の有無で違いがみられた。

3)収穫時のりん茎は育苗,本圃での施肥方法,施肥量の違いにかかわらず重量,直径,高さは同等となり,収穫率も同等であった。分球の発生率は両播種日とも年内追肥の有無で大きく異なり,年内追肥のない区においては発生が少ない,または発生がなかった。また分球はマイクロロングトータルの施肥量で比べると50g区で多くなった(表3)。

4)収量は対照区および試験区で年内追肥区において分球が多くなったため,規格外が増え秀品収量が少なくなった(図1)。マイクロロングトータルの施肥量の影響は判然としなかった。

5)貯蔵時の腐敗は年内追肥をしなかった区で発生が無かった(図2)。

6)以上の結果より,マイクロロングトータルの育苗培土混和は慣行方法に比べて苗質,収穫率,りん茎の大きさが同等であることが分かつた。また,マイクロロングトータルの施肥量はりん茎の大きさに影響はないが,分球の発生が50g区で多くなるため,セルトレイ1枚当たり25gが適当であると考えられた。加えて,肥料の培土混和により育苗時の追肥作業が不要となることから,育苗の省力化につながる技術であると考えられる。

4. Conclusion

 富山県における機械化体系による秋まきタマネギ栽培は,2009年に機械が初めて導入されて始まっており,試行錯誤を繰り返しながら技術を組み立ててきている。既存産地とは気象条件や栽培環境が異なるため技術の単純な導入は難しく,参考にしながらも富山県に適した栽培方法について試験に取り組み,同時並行で現地への普及導入をしている。本試験に取り組んだ2011年は,現地でも分球が多発生し,品質低下が問題となった。試験結果をふまえ,定33週間後の追肥をなくし,育苗時の追肥量の見直しを行ったところ,2012年からは分球の発生がほとんどみられなくなった。
 当研究所においても,見直した育苗施肥量や本圃施肥量をもとに2013年にマイクロロングトータル(70タイプ)を用いて再試験を行ったところ,本試験同様に苗質に差はなく,収穫物についても慣行栽培と同等の収量,品質が得られた。
 現地においては培土に肥料を混和する手間があるため,導入については検討が必要であったが,県内の培土メーカーによる協力が得られ,2013年から現地試験を行っているところである。慣行育苗での施肥量を削減してきでいること,培土の親水性の違いなどから,慣行育苗と同様の水管理では,マイクロロングトータルの混和培土苗はやや徒長気味となるため,エアープルーニングを組み合わせることが良いと考えている。
 育苗培土に緩効性肥料を混和することで育苗時の追肥作業がなくなり省力化となる。富山県における育苗は8月下旬からハウス内で行う高温条件下での作業であること,タマネギ栽培農家は水稲も栽培しており水稲収穫作業とタマネギの育苗作業が重なることから,育苗作業の省力化は要望が高い。2014年播種の作型においても現地試験が行われており,市販化に向けた検討を継続中である。

 

 

<産地レポート>

「JAあしきたサラたまちゃん部会」の早出したまねぎ
における機械化・施肥低減技術確立への取組

熊本県県南広域本部芦北地域振興局
農林部農業普及・振興課 寺本 伸子

 熊本県の水俣・芦北地域では,JAあしきたサラたまちゃん部会(部会員98名)が,早出したまねぎの栽培において,熊本型特別栽培農産物認証を受け,除草剤を使用しない環境保全型農業に取り組んでいます(平成25年産の作付面積は63ha,出荷数量は2,400t)。
 慣行栽培では,粒状エンリッチケイカル60号(100kg/10a)を散布後に,歩行型の畝内施肥同時マルチャーを使用して「サラたまちゃん専用肥料194」(120kg/10a)を施用しています(写真1)。

 今回,機械化や施肥低減技術確立のため,乗用トラクター装着型畝内局所施肥同時マルチャーを使用して,施肥量を約2割削減し,施肥深度5cmと10cmの2つ位置での比較調査を行いました(表1,写真2)。

 調査の結果,慣行の畝内全層施肥区と比べ,収量は局所施肥10cm区がやや多く,局所施肥5cm区は少なく,品質では局所施肥10cm区はほぼ同等で,局所施肥5cm区は小玉傾向でレモン球が多くなりました(表2)。

 経済性(利益)では,畝内局所施肥10cm区は機械導入のために減価償却費が増加したものの,単位面積当たり収量がやや増加したため, 10a当たりの収益は慣行の185,817円に比べ186,408円とほぼ同等の結果が得られました。
 乗用トラクター装着型畝内局所施肥同時マルチャーを導入することにより,肥料を約2割削減しても慣行と同等の収量や収益が得られ,環境保全型農業を進めることができます。
 JAあしきたサラたまちゃん部会では,超早生品種においては浅い施肥位置の方が収量増加の可能性があるため,定植時期ごとの適正施肥位置の検討が必要との意見もあり,今後も,この課題に取り組み栽培技術を確立していく予定です。

 

 

農家とともに114年
-JA花咲ふくい坂井農場の歩み

花咲ふくい農業協同組合 営農指導課
坂井農場
場長 長谷川 彰

Introduction.

 昨今新聞紙上で農協の役割等について種々議論されておりますが,JA花咲ふくいが運営する坂井農場は歴史が古く,農業指導拠点として長らく水稲の品種比較試験や施肥・病害虫防除の研究,国・県の委託試験に取り組んできました。こうした農協の取り組みは,全国的にも唯一といえます。そこで坂井農場の概要と近年の取組例として,苗箱試験について紹介いたします。
 坂井農場を運営するJA花咲ふくいは,福井県の最北部に位置し,あわら市,坂井市(春江地区除く)の2市が管轄の区域で,人口は約9万8千人を擁しています。穀倉坂井平野と丘陵地・砂丘地があり,稲作・園芸作物の生産が県内で最も盛んな農協です。
 本地域は,福井県で育成された全国的にブランド米として有名な「コシヒカリ」を中心とした稲作を基幹としており,転作作物は大麦+大豆,大麦+そばの周年作が主体で米麦大豆等の販売額の割合は約70%を占めています。
 また,丘陵地では,スイカ,メロン,柿,梨などの畑作園芸や畜産が盛んに行われています。

★農協の概要

 組合員数:12,215人
 耕地面積:7,4 20ha(水田) 1,121ha(畑)

★114年の歴史,坂井農場

 坂井農場は,県農会長・帝国農会長を務められた山田斂先生の卓越した識見と指導力により,明治33年に開設されて以来114年目を迎えています。その当時は,現在のように農協の営農指導事業も県の普及事業もなく,技術指導等の拠点は,各町村単位に設置されていた農会が担っていました。現在の福井県農業試験場は,元福井県農会の農事試験場であり,当農場は坂井郡農会農事試験場に位置づけられていました。
 その後,時代の流れにともなって,戦後,農会の組織が解消され,新たにJAの営農指導事業や県の普及事業が誕生しました。その結果,県や地域の農会試験場は,一部の地域では県立試験場に置き換わったものの,ほとんどの農会の試験場は廃止に追い込まれました。しかし当農場は,農業者の厚い熱意により坂井郡農民の農場として継続してきました。この間,農場の運営主体は, 県農協中央会から県経済連へ,現在はJA花咲ふくいが担っております。

★坂井農場の役割

 坂井農場の役割は3つあります。
 1.新品種・新技術・新資材の実証試験・普及
 2.情報の提供
 3.人材の育成です。
 まず農業団体や県農業試験場等の関係機関と連携し,新品種や新技術・新資材の実証に取り組んできました。
 また,生育情報や新品種・新技術は,迅速に普及することが重要なため,坂井農場では,認定農業者や集落営農のリーダーの方を対象に毎年7月上旬に農場参観デーを開催するとともにホームページを開設し,生育情報や農場の取組等について紹介しております。

 さらに農場は,人材育成の役割も有しております。調査に当っては,農場職員だけでなく,JAの営農指導員や展示資材のメーカーの方にも,生育調査に参加してもらっています。調査は,昔ながらの物差し,葉色板等によるものが主体ですが,生育変化を直接肌で感じることが出来る自己研さんの場ともなっています。

★近年の坂井農場の取り組み

 坂井農場は,福井県最大の穀倉地帯である坂井地域の農業者の所得向上を図るため,農業試験場等で開発された新品種や新技術の普及を図るための実証展示やこれらを支える生産資材(肥料,農薬)が坂井地域に適合するかを確認してきました。
 発足当初は食糧増産のために水稲優良品種の統ーや,省力栽培,共同育苗の推進や地力の増強対策に,その後は稲作の安定増収,さらには消費者ニーズに即したおいしいコメ作りへと時代の変遷とともにニーズに応じた様々な試験に取り組んできました。
 特に近年は,水田の割合が90%を占める稲作の低コスト化・作期拡大を進めるため,栽培面では直播栽培の推進を図ってきました。また,坂井地域はもとより福井県では,コシヒカリを初めとする主力品種の出穂期は7月下~8月中旬で,国内では最も出穂後の気温が高い地域であり,近年では温暖化による高温の影響から乳白粒の発生が多く,この対策として遅植えにより作期(5月15日以降)をずらす試験に取り組んできました。
 さらには,産地間競争が激しくなる中,主要な産地の多くは化学合成資材の使用を減らす取り組みを行っており,福井県でも団体と行政が連携してエコファーマーになることを推進しており, これらに対応した基肥一括肥料の試験に取り組んできました。

★近年の主な取組成果

1.新品種「あきさかり」の普及

 福井県農業試験場が育成した品種の現地適応性を実証するため,農試,普及センターと連携し,毎年奨励品種調査事業を行っています。近年の成果としては,平成21年度県の奨励品種となった「あきさかり」です。本品種は,コシヒカリよりも出穂が4日,成熟期が7日程度遅い「晩生の早」で,高温登熟性が高く,また,草丈が短く倒伏に強いことから,直播適応性が優れており,現在普及拡大に努めています。

2.栽培技術

①五月半ばの適期田植の普及

 福井県の田植は,兼業農家が多いことから家族総出で5月のゴールデンウィークに行われ,春の風物詩として定着していました。しかし本県では,温暖化の影響を受けコシヒカリの出穂期が年々早まる傾向にあり,登熟期の高温により乳白粒等の発生による品質低下が続いていました。そこで農場では平成14年度からコシヒカリの遅植試験に取り組んできましたが,農場や試験場の成績をもとに,平成21年度からは,福井米の品質向上,有利販売を進めるため,県普及センタ一等と連携を行い,福井県全体で,5月15日以降の「五月半ばの適期田植え」を強力に推進しました。移植時期を遅らせることにより出穂期が遅れて登熟気温がやや低下するとともに,稲体がコンパクトになることから,乳白粒の低下,千粒重の増加,タンパク質含量の低下が得られ,2014年現在,直播栽培と併せコシヒカリの「五月半ばの適期田植え」は全地域に定着してきました。

②メーカーと一体となった基肥一括施肥法の取り組み

 施肥の大幅な省力化と慣行の分施法に比べ乳白粒が少なくなるなど品質がすぐれる特徴を持つ基肥一括施肥法は,認定農業者や生産組織を問わず広く普及しています。その推進力となったのは,メーカーと県農試,農業団体が一体となって肥料の開発・普及に取り組んだことが挙げられます。当時本県で育成したコシヒカリの安定生産と収量品質を手間をかけず省力的に確保することは関係者の悲願で,各機関で試行錯誤が行われていました。こうした中,ジェイカムアグリ(株)による国内初のシグモイド肥料の開発に伴い,農試とメーカーが協力し新肥料の開発を試み,営農指導・普及組織は現地実証に取り組み,坂井農場もその一翼を担ってきました。その結果,究極の施肥法として福井県が全国に先駆けて,緩効性肥料を用いた基肥一括施肥法の導入が実現しました。構成肥料の配分に工夫を加え,当初の初期生育過剰で秋落ち傾向から,ゆっくりした初期生育と登熟後半までの安定した肥効が維持できるように改善されており,基肥一括施肥法は,現在管内の約70%に定着しています。また,5~6年前から,県下一円でエコファーマーを推進していることから,農場では,有機質入基肥一括肥料の施肥試験に取り組んでいます。

③直播の推進

 稲作の省力栽培,作期拡大をめざし,本地域では全国に先駆けて直播栽培に取り組んできました。農場では,出芽・苗立ちの安定化を図るため,県と連携し播種後の水管理やカルパー試験,肥料試験を,また雑草対策が極めて重要であることから,除草剤試験にも重点的に取り組んできました。直播は,移植より出穂期が遅れるため登熟気温が低く,総籾数も少ないことから,品質も良好であるなど遅植えと同等の効果が期待されています。現在,JA花咲とJA春江を含む坂井地域の約20%,約1,311haで直播に取り組んでいます。品種はコシヒカリが約50%を占めています。ちなみに,福井県の直播面積は,全国で最も大きく,今では直播技術が定着しています。

④エコファーマー推進

 食の安全・安心や環境に対する消費者の意識は,年々高まっています。また,産地間競争が一層激しくなる中,各産地では化学合成資材の使用を減らす取り組みを行っていますが,福井県でも全ての生産者に対しエコファーマーになることを推進しています。
 このため,JAと普及センターが一体となり,土づくりや化学合成資材の2割以上低減の技術導入を支援しています。化学肥料の2割以上の低減については,本県では,基肥一括肥料の普及率が高いことを踏まえ,各メーカーと県・農業団体が一体となりエコファーマー用の基肥一括肥料を開発しました。坂井農場でも坂井地域の適応性を検討するためエコファーマー用の肥料等の試験を行い,当地域に適する肥料選定に参画しています。福井県のエコファーマー認定者数は,現在では全国一です。

★平成25年度の苗箱まかせ試験概要

1.課題名

 転作跡(大麦+大豆跡)コシヒカリを対象とした苗箱まかせの実証試験

2.目的

 坂井地域は,福井県でも有数の米作地帯で転作の対応は大麦+大豆,大麦+ソバの体系で推進している。従来,コシヒカリの栽培は,大麦+大豆跡の水田については,地力窒素の発現量が増大するため倒伏の懸念が高まることから,早生,晩生品種で対応してきた。しかし,転作面積の増加に伴いこうした圃場についてもコシヒカリの栽培を希望する農家が増加しつつある。そこで従来の穂肥窒素相当分のみカバーできる苗箱まかせを前年大麦+大豆を作付けした圃場の跡地で実施した。

3. test method

①供試品種:コシヒカリ
②土壌条件:
  埴壌土 麦稈・大豆の収穫残さ全量鋤き込み
③耕種概要:播種4/22 移植5/16
④供試肥料:
  苗箱区 くみあい水稲育苗箱全量施肥専用40LPコートN100(40-0-0)
  慣行区 くみあい有機入り化成550(15-5-10)
⑤試験区の構成

⑥生育概要:幼穂形成期7/11 出穂期8/2

4.結果の概要

1)生育経過の概要

 草丈は,6月末まではほぼ同様に推移したが,幼穂形成期には苗箱区がやや長めとなった。成熟期の稈長は大差なかった(図1)。

 茎数は,6月中旬ごろまではほぼ同様に推移したが,その後慣行区の茎数は増加し,最高分げつ期は,慣行区は6/28 ,苗箱区は7/12頃となった(図2) 。成熟期の穂数は苗箱区(380本/㎡),慣行区(329/㎡)で苗箱区が多く確保された。

 葉色は,6月までは試験区がやや濃く推移したが,7月中旬以降は追肥により慣行区が濃く推移した(図3)。

2)収量等

 収量は苗箱区53.2kg/aで慣行区58.5kg/aに比べ劣ったものの,外観形質・品質では良質粒率,食味値はやや高い傾向を示した(表1)。

5.要約

 苗長は,苗箱区(12.9cm)が,慣行区(12.1cm)に比べ,やや長くなったもののマットの形成は十分で田植に支障はなかった。苗箱区の収量は,慣行区に比べ劣ったものの気象対策試験区の収量よりも上回り,一定の成果がみられた。しかし,7月中旬以降の葉色が慣行区に比べ淡くなり,屑米重が多くなったこと(苗箱区6.7kg/a,慣行区4.4kg/a)を考えると,出穂期以降の肥効を高める工夫が必要であるが,転作大豆跡地での実用化は十分可能と思われる。

★平成26年度の苗箱まかせ試験概要

1.課題名

 水稲跡コシヒカリを対象とした苗箱まかせの実証試験

2.目的

 昨年度は,大麦+大豆跡コシヒカリを対象に試験を実施したが,本年度は水稲跡コシヒカリを対象に苗箱まかせを使用し,収量品質等の調査を行った。

3. test method

①供試品種:コシヒカリ
②土壌条件:埴壌土 稲わら全量鋤き込み
③耕種概要:播種4/22 移植5/15
④供試肥料:
  苗箱区 くみあい水稲育苗箱全量施肥専用40LPコートN120(40-0-0)
  慣行区 くみあい水稲専用LPコートSS・有機入り複合065-100(20-6-5)
⑤試験区の構成

⑥生育概要:幼穂形成期7/10 出穂期7/30

4.結果の概要

1)生育経過のああr概要

 草丈は,幼穂形成期頃までは,慣行区がやや長く推移したが,その後は大差なかった(図1)。成熟期の稈長も苗箱区(85.4cm),慣行区(85.6cm)でほぼ同様であった。

 茎数は,生育前半から慣行区が苗箱区に比べ旺盛な生育を示した。最高分げつ期は,慣行区は6/26,苗箱区は7/10頃となった(図2) 。成熟期の穂数は苗箱区(305本/㎡) ,慣行区(356本/㎡)で慣行区が多く確保された。

 葉色は,移植後から6月末までは慣行区が濃く推移したが,7月以降は苗箱区がやや濃く推移した(図3) 。

2)収量等

 収量は苗箱区54.0kg/a,慣行区52.4kg/aで、大差なかった。外観形質・品質では苗箱区に比べ,慣行区の良質粒率,食味値はやや高い傾向を示した(表1)。

5.要約

 育苗では,苗箱区,慣行区いずれもマットの形成は十分で田植に支障はなかった。
 苗箱区は,生育前半,茎数が少なく総籾数が十分確保されるか不安であったが,穂数は少なかったものの,1穂籾数が増加し,慣行区に比べ同等以上の結果を得ることが出来た。本年のコシヒカリの特徴は,生育前半はやや過剰生育気味で生育後半の日照不足により屑米重が増加し減収・品質の低下となったことである。これらを考慮すると苗箱区での生育前半の茎数不足が結果的に好影響をもたらしたと考えるべきで,本年度の気象と苗箱まかせの肥効がよりマッチングしたと考えられる。
 土壌条件は異なるものの,2ヶ年の試験により苗箱まかせの一定の効果は確認できた。特に本地域では,大麦+大豆跡の体系での利用は有望であると考えられる。本技術は,本年3月の農水省の補正予算の目玉事業「稲作農業の体質強化緊急対策事業」にも米コスト削減支援対策と位置付けられており,今後も注目していきたい。

Conclusion

 農業を取り巻く情勢は,振り返ってみるとコメの消費量の減少,収量品質の向上,米価の低迷,担い手の高齢化,農地集積,低コスト化,複合経営,経営の多角化,自由化,6次化,消費者ニーズ,温暖化,TPPなど多くのキーワードで表現されてきました。坂井農場を取り巻く環境も時代とともに変遷してきましたが,いままで歩んできた「農業者のための農民道場」としての原点を踏まえ,新品種や低コスト・新技術の実証・普及をとおして,農業者の所得向上に努めたいと念願しております。今後とも皆様のお力添えをお願いいたします。